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動機

category: 大流舞亭  

こんばんは、大流舞亭です。

突然ですが、北海道医療大、国際医療福祉大、聖隷クリストファー大、この三つに三年前(2010年)、ある可能性が浮上しました。いったい何でしょうか。

それは、医学部医学科の新設です。

その他にも、はこだて公立みらい大学、同志社大学、早稲田大学など医学部新設に興味を持っている大学は多くあるそうです。なぜでしょうか。それは、一昔前の私立大学による薬学部新設ラッシュに似た動機があるようです。

話すと長くなるので割愛しますが、個人的に今回の書いた話は、そう遠くない未来に実際に起こるのではないかと危惧しています。




 
 タイトル:動機


 ある街で、殺人事件が起きました。

 殺されたのは一人のホームレス。

 凶器のナイフからは犯人の指紋が検出されました。

 そこから割り出されたのは第一発見者の学生。

 警察が学生を追及すると、拍子抜けするくらいあっさりと罪を認めました。

 そして警察は詳しい動機を聴くために、学生を取り調べることにしたのです。

「さて学生くん。君はどうして殺人なんか犯したのだ?」

 りっぱなひげをたくわえた刑事さんが、学生にそう聞きました。ここは、とある警察署の取調室です。取調室には学生とひげの刑事さん、そして新米の刑事さんの三人がいました。学生とひげの刑事さんは机を間に、向かい合って座っています。新米の刑事さんは机の少し横に立って、そのやりとりを見ています。

「僕は成績が良く、両親も先生も、とても大きな期待をかけてくれていました」

「ほうほう、すると君はその期待がプレッシャーになってストレスが溜まり、犯行に至ったというわけだね」

 ひげの刑事さんは頷きながら、手元にあった書類にペンを走らせます。供述調書というものです。

「いいえ、違います。」

「違う?」

 ひげの刑事さんはペンをピタッと止めて、顔を上げました。学生は無表情のまま、

「僕は期待に応えるべく、以前にも増して勉強しました。すると目を見張るぐらい成績が伸びたのです」

「それでは、両親や先生に、半ば強引に医学部受験を勧められた。そのストレスで――」

「いいえ、違います」

「これも違うのか」

 ひげの刑事さんは眉をしかめて腕を組みました。なおも学生は続けます。

「医学部には興味がないどころか、進学することを強く希望していました」

「分かったぞ、友人関係の悩みか」

「友人関係は良好です」

「ううむ……じゃあホームレスが因縁をつけてきた」

「全く違います」

「……ぐぐ」

 ひげの刑事さんは奥歯を噛み締めて、ゆさゆさと貧乏ゆすりを始めます。

「たまたま偶然刺したくなった!」

「そんなわけないでしょう」

「それではいったい、どんな悩みがあったのだ!?」

「悩みなんてありませんでした。」

「うそをつくな!」

 学生の言葉に、とうとうひげの刑事さんは立ち上がり、思い切り机を叩きました。大きな音が響き、それまでただ見ているだけだった新米の刑事さんも慌てました。

「先輩、落ち着いてください!」

「これが落ち着いていられるか!」

 ひげの刑事さんは立ち上がり、学生に大声でもう一度質問しました。

「どうして殺した!? 動機がないのに殺人を犯すわけがないだろう!」

「動機は、動機が無いことです」

「なぞなぞをしているんじゃないんだぞ!!」

 ひげの刑事さんの顔はトマトのように真っ赤になりました。これでは冷静な取り調べができません。仕方なく、今度は新米刑事さんがイスに座り、ひげの刑事さんに代わって質問しました。

「学生君、動機が無いことが動機って、どういうことだい?」

「医学部に入るには質の高い動機が必要なんです。」

「質の、高い?」

 新米刑事さんは首をひねりました。

「医学部には面接があります。なぜ医者を目指したのか、動機を聞かれるのです。」

「医療の分野で人々に貢献したい、では駄目なのかい?」

 新米刑事のその言葉に、学生は大きく首を横に振りました。

「そんなありきたりの理由では駄目です。他の受験生を出し抜くほどの理由でないといけません」

「ううむ。そもそも、君はなぜ医者になりたいんだ?」

「一生楽できるからです。」

「……何だって?」

 新米刑事さんは、自分の耳を疑いました。

「医者になれば、たくさんのお金が手に入ります。リストラもない。将来が安泰なのです」

「医学部を受験する人は、皆、そうなのかい…?」

「まさか。半分ほどしかいませんよ」

 学生はフッと笑いました。反対に、新米の刑事さんは悲しい顔になります。確かに医者は高給ですが、それにはそれなりの理由があるわけで、とにかく、値段のつけられない命を救う医者になる理由が、多額のお金と地位を得るためだという矛盾めいた動機に、新米の刑事さんは複雑な気分になったのです。

「ふん。世も末だな」

 冷静さを取り戻したひげの刑事さんは、冷たい視線を学生に送りながらそう吐き捨てました。

 そして新米の刑事さんは溜息をつきながら両手を握り、机にひじをつきます。

「なあ、学生君。君が医学部を志望する動機は、よく分かった。だがね、それがどうして人を殺す動機になったんだい?」

「なっていません」

 学生のその言葉に、新米の刑事さんは眉をしかめました。

「学生君、私達を困らせないでくれ」

「困るのは僕の方ですよ。僕、ちゃんと言ったじゃないですか。動機が無いのが動機だ、って」

「動機ならあるじゃないか。さっき君自身が言った。金のためだって」

「あれは本音の動機です。無かったのは、建前の動機です」

「本音、建前……?」

「僕はその建前の動機が無かったから、わざわざ動機を作ったんです」

 ひげの刑事さんも新米の刑事さんも、学生の言っていることが理解できませんでした。その様子を見て学生は、小さく息を吐き、

「親戚が死んだ、祖父母が死んだ、親が死んだ。これは、一度は誰しもが経験していることなんです。こんなものは、質の高い動機にはなりません。試験に勝ち抜くためには、何か他人とは違う、すごい経験をしなければいけない。だけどそう簡単に、そんな機会は訪れるものじゃない」

「…………うそだ」

 ぽつりと、新米刑事さんは思わずそんな言葉を漏らしてしまいました。

 学生の言わんとする言葉の意味に、気が付いたのです。

「なら、自分で作ればいい」

「…………おいおい」

 少し遅れて、ひげの刑事さんもやっと気付きました。そして、みるみるうちに顔が真っ青になっていきます。

「赤の他人を、殺せばいい」

 学生の口調は淡々としていました。

 ひげの刑事さんが、手に持っていたペンをするりと落としました。カツンと乾いた音が響きます。

「だから僕は、あのホームレスを――」

「殺したというのか!」

 新米の刑事さんが、真っ赤な顔で怒鳴り、学生に掴みかかりました。

「お、おい。落ち着け」

 ひげの刑事さんは慌てて新米の刑事さんを学生から引き離しました。しかし、なおも新米の刑事さんは叫びます。

「そんなくだらない理由で人を殺したのか!」

 その言葉に学生は軽く首をかしげます。

「くだらない? 心外ですね。医者になれば何十人、何百人の命を救うことになるんですよ。そう考えると、医者になるために一人殺すくらい大したことじゃないでしょう?」

「この野郎!!」

「落ち着け新米!!」

 ひげの刑事さんは興奮する新米の刑事さんを後ろから羽交い締めにします。新米の刑事さんは肩を上下させて荒い息を吐いていました。

 学生が殺人を犯した動機がはっきりしたので、ここで取り調べが終わりました。

 最後に、ひげの刑事さんが学生に、

「なあ、医学部を受験するやつは、皆こうなのか……?」

「まさか」

 学生はニヤリと笑い、



「半分ほどしかいませんよ」



 おわり
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2013_06_02

Comments

 

先月とは全く違った系統の話でしたね。
個人的にこういった話は好みなので、楽しく読ませていただきました。

今回は表現関係の話でも無ければ、書き方の話でもなく、個人的な感想です。
前書きから本編までを読んでまず感じたのは「突拍子も無い話だから、遠くない未来に実際に起こりそうと言われてもピンと来ないな」でした。
学生の言い分にいまいち説得力が無いというか、この学生の頭がおかしかっただけで、こういった事件が複数、もしくは頻繁に起こるとは考えにくいのです。
しかし、学生の「半分ほどしかいませんよ」という台詞からは、事件として上がってきていないだけで他にも学生と同じようなことをしている人間は居る事を示唆しているように感じます。
他者を殺した事を志望動機にして試験官の前で語ろうと考えている、受験生。
事件自体を警察に悟られずに起こした場合でも、試験官に話した時点で投獄されると学生だって考えたはずです。
しかしそれでも、それを志望動機にする理由が見えてきませんでした。
このへんが未来で起こりそうだと思えない理由です。

分かりづらい文章で申し訳ない。
自分でも、探り探り書いていたのでこんな事になってしまいました。
 URL   2013-06-02 10:26  

 

コメントありがとうございます。

>学生の言い分にいまいち説得力が無いというか~起こるとは考えにくいのです。

 頭のおかしい学生が、これから増えていくと思うのです。御存知の通り医学部入試は熾烈を極めています。二浪三浪は当たり前、進学校では東大合格者数よりも医学部合格者数を学校の宣伝に使うほどその「価値」は高くなっています。そしてその志望者の全てが崇高な志を持って医学部を志望しているかというと、それはほんのひとつまみだと思います。医学部に進学した友人を六名知っていますが、跡継ぎだからという理由を除いて全てが社会的地位、高収入を理由に進学しています。たった六名かと思うかもしれませんが、各々の大学での話を聞く限り、そういった進学理由の生徒は大勢いるとのこと。
 不況の煽りもあり、医学部志望者は増えています。伝染病が流行ったから、医学部志望者が増えたのではなく「不況の煽り」を受けてです。
「種」は既に大量に蒔かれ、それが「芽」として現れる可能性は昔よりもずっと高いと思うのです。

>しかし、学生の「半分ほどしかいませんよ」という台詞からは~示唆しているように感じます。

 そのとおりです。示唆しています。

>他者を殺した事を志望動機にして試験官の前で語ろうと考えている、受験生。事件自体を悟られずに~考えたはずです。

 学生はわざわざ初めからベラベラ語ろうと考えていたわけではないし、話せば投獄されると考える以前にもうすでに冒頭であっさり罪を認めています。はじめ、学生は自分から積極的に動機を語ろうとはしていません。あくまで刑事に質問されて淡々と答えていたのです。それがだんだん、刑事と学生の間に見えない壁が出てきたのです。壁があっては会話というキャッチボールを続けることはできません。だから刑事は苛立ちました。それが学生には非常に滑稽に見えたのです。だから無表情だった顔に笑みができたのです。ここで学生と刑事の立場が逆転します。
 

 最初に「突拍子も無い話だから、遠くない未来に実際に起こりそうと言われてもピンと来ないな」とありましたが、実は刑事さんのモデルは「今の価値観を持った私達」です。突拍子も無くピンと来ないから刑事さんは初めに学生の言っていることが理解できなかったのです。

 誰だって何か事件が起こると「まさか現実に起こるとは」と感じるものです。酒鬼薔薇然り、同時多発テロ然り。

 刻々と時代は変わっていきますから、今の価値観で信じられないことでも未来では当たり前になっているかもしれません。

 私達が気をつけることは「もしかしたら」という気持ちをもってそれに対する心構えと対策を持っておくことだと思います。

 今回のタイトルは「動機」でしたが、テーマは「時代における価値観の相違」です。


コメントありがとうございました。
大流舞亭  URL   2013-06-02 12:00  

 

丁寧な説明、ありがとうございます。
しかし、やはり少し腑に落ちないのでもう少し質問させていただきます。

私は始め「学生は警察に気づかれないよう殺人を犯し、それを医学部を志望した動機として面接で語ろうとしていた」と解釈していたのですが、大流舞亭さんは「学生は殺人を犯し警察に捕まり、釈放された後に医学部を受験し志望動機として殺人を犯したことを面接で語ろうとした」と考えていた、ということで良いのでしょうか?

テーマが「価値観の相違」であれば、殺人を犯した事を面接官に語って合格を貰えるだろうと考えている学生にも納得は出来ます。
ただ、価値観以前の問題としてこの学生には処世術が圧倒的に足りてないのだと感じました。
そこはあくまで学生だから…という事なのでしょう。

テーマや大流舞亭さんの考えが面白かったもので、つい色々と考えてしまいました。
処世術うんぬんまで気にすると、話として全く面白みが無くなってしまいますから、これは「もし実際にこのような事件が起こったら」という前提での私の考えだと思ってください。

作品もですが、大流舞亭さんのコメントも色々と考えさせられて面白いと思いました。
次回作、楽しみにしています。
 URL   2013-06-05 12:02  

 

コメント、本当にありがとうございます。

>私は始め~ということで良いのでしょうか?

 学生は、家族以外の、他人の死に遭遇するという「他の受験生に差をつける、一線を画した理由」を欲しがっていたのです。生半可な、ありふれた志望理由では太刀打ちできないこともあるからです。
 また、学生は捕まるつもりはありませんでした。捕まったら、それだけ医者になるのが遅れてしまうので。学生は「あっさり」罪を認めました。あっさり。ここが、学生の怖いところです。
 普通、殺人という重罪を犯した場合、明らかな証拠があったとしても強く否定するはずです。
 強く否定するということは、それだけ罪の重さを自覚している、ということでもあります。
 しかし学生は強弱どころか、否定そのものすらしない。
 それは、自分の犯した罪の重さを自覚していないということなのです。
 
 「自分が医者になれば何人もの人が救えるのだから、そのために一人くらい殺してもいいじゃないか」

 学生は人の命を天秤にかけられる「物」だと思っています。またあくまで何人も人が救える云々は建て前で本当の理由は医者の高待遇。高ステータスに惹かれて……という頭の痛いものとなっています。
 ただ人は殺さないまでも医者を目指す理由が高待遇を得るためという人も少なくないようで……


 長々と書いた駄文にコメントをいただき、本当にありがとうございます。

 今回のテーマはとても難しく、書いている途中でも悩みっぱなしでした。書いた後でも悩みっぱなしです。これで本当に正しいのだろうか……とか。

 次回は一転してバカで明るい話なので、口直しになれば幸いです。

 本当に、ありがとうございました。
 
大流舞亭  URL   2013-06-05 22:38  

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